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    惑星


    しょうがの効いた鍋をつつき、どうしようもない日々を職場のおじさんと嘆く。

    鍋を食べに行った。

    平日の店内は入ったときよりも時間がたつにつれ、客が増えていく。

    くたくたになったキャベツや鶏肉をよそい、ほかほかと湯気の立つ料理を食べると、体が知らぬうちに火照ってしまっていた。

    煮詰めすぎた出汁は雑炊にするとしょっぱく、しょうがの風味が強まりすぎていたけど、残すのは店に悪いのでかきこむ。

    外に出ると、のどが渇いた。と、二人の意見は一致し、二件目にふらりと立ち寄ることにした。

    ドイツのビールが楽しめるとうたう店で、おじさんはよくわからないビールを、俺はホットココアを頼んだ。

    ここのココアはしっかり甘くおいしいのだ。メロンソーダもうまいので気に入っている。G,G,C,というよくわからない店の名は今回やっと覚えた。

    おじさんはおつまみでスモークチーズを頼んだ。俺は人生ではじめて食べ、感動した。スモオクチーズ。

    香ばしく、適度な歯ごたえを持ち合わせるそれはまさに、燻製。という感じでびっくりするほどおいしかった。

    ビールに合うとはきっとこのことを言うんだろうな、と呑めないながらに推測できるほど。

    長いこと工場で働いているおじさんの眼鏡の奥の目は綺麗な二重で、たまにすごく遠くを見つめる顔をする時がある。

    仕事のことや面白い話をして、時間はあっという間に過ぎていき、気づいたら9時半になっていた。

    外に出ると待ちゆく人が空を見上げ、何事かと思ったら、そうだ今日は皆既月食だ。

    振り返った空に浮かぶ月は半分が薄く赤くなり、月食が始まっていた。

    おじさんとわいわい騒ぎながら夜の商店街をゆく。声をかけてきた客引きの声がかき消されるほど大きな声で笑っていたらしい。相当愉快だったんだろうな。

    バイクで家につき、双眼鏡で見上げた月は思ったより赤くなく、きっとアニメの見すぎなんだろうなという結論に行きついてしまった。けれど、やはり赤いことは赤く、火星が地球を周回しているとこんな風に毎晩浮かんでいるんだろうなと想像できた。

    そしてやっぱり地球は惑星なんだな、と実感した。なんでも太陽と地球と月が一直線に並んだ時に起こる現象らしい。

    宇宙や自然の前では自分自身のちっぽけさを確認せざるを得ない。そんなことでしか存在を知れない人間だということも思い知った。

    スーパーブルーブラッディームーン。世紀の天体ショー。次に起きるのはいつだろう。100年後かな。

    そしたらもう死んでるな。そう考えると少しロマンを感じる。どんなに未来が変わろうと、皆既月食の赤さはいつの時代も変わらない。未来の人たちはどんな服を着て、どんな目で見上げるんだろう。

    俺の場合はこう。

    ーーーー22時29分。皆既月食、最大。あなたの街では見えましたか?----